第一弾!初夏の三陸海岸をレンタカーで疾走(6)・・・親父のタレ
2013.07.18|
気仙沼復興屋台村
三陸の旅もそろそろ終わりに近づいてきました。
この夜の宿は宮城の気仙沼市。
東北地方屈指の遠洋漁業の基地として有名なこの街も、
大津波とその後の火災で沿岸部は壊滅的な打撃をうけました。
復興屋台村という飲食店街があると聞き、のぞいてみることに
しました。
【http://www.fukko-yatai.com/】
?
「今夜のごはんは、なににしよかな~?」
なんて考えながら、屋台村にある店を一軒一軒のぞいて廻ってると、
目に飛び込んできたのが、下の看板。
といっても、飛び込んだのは『気仙沼ホルモン』の文字でなく、
シャウトする永ちゃんの写真です。
なにを隠そう、僕は永ちゃんを敬愛するのファンの1人です。
ということは、この店の主も永ちゃんのファンに違いないと、
迷うことなくアルミサッシの引き戸を開けると・・・
Whooooo!!
ファンキーモンキーホルモン焼き~~~
壁にはマニアックなクラシックカーのポスター。
正面には、今どきそうそう見かけないラジカセがデーンと鎮座。
なんだか、ホルモン焼きのイメージとは違うな~??
「大丈夫やろか~~~」
不安が頭をもたげます。
あああ、しまった~~!
しかも、足元を見て愕然。
椅子がない・・・
最近、東京や大阪でも立ち飲みが隆盛ですが、
僕は腰が痛くなるので、立ち飲みは苦手なんです。
でも、入ってしまったものは仕方ない。
「ともかく何か注文しよう」
と、気を取り直して壁のメニューを見ると・・・
「へぇ~、安いやんけ」
初めての店は、どうしても値段が気になりますが、
これなら、安心。
うっかり立ち飲みに入ったショックも忘れ、
俄然、強気、やる気、食う気モードにギアチェンジ。
そして、気仙沼ホルモンの世界へ・・・
焼き物の前に、とりあえず乾いたノドをビールで潤おす。
おあては、気仙沼港に陸揚げされたマグロの中落ち。
そうこうするうち、炭火がいいあんばいにいこってきましたよ。
ここで、ドンと目の前に置かれた皿には、豚のホルモンが山盛りに。
そのホルモンを網の上に惜しげもなく並べていくと・・・
ホルモンがいい感じに焼けた頃を見はからって、
きれいなお姉さん(実はマスターの奥さん)が、
きざんだキャベツに、ドバ~ッとウスターソースを垂らします。
気仙沼ホルモン・赤
炭火で焼いたホルモンをソースでドボドボのキャベツにまぶす。
それを箸で口に放り込むと、ホルモンの濃ゆ~い味と甘辛いソースが、見事に調和。
これがご当地グルメ、『気仙沼ホルモン・赤』なんだそうです。
「なるほど、これが噂に聞いた気仙沼ホルモンなのか!!」
ちょっとだけ、興奮してしまいました。
この店(七輪屋500)のマスター熊谷友志さんと奥さんの美幸さんです。
お店のブログはこちら↓
【http://ameblo.jp/7rings500】
マスターが指差す胸のエンブレム。
一見、あの有名ポロシャツかな~、と思いましたが、
よく見ると、どこか違う。
実はこのポロシャツ、マスターがデザインしたオリジナルで、
このお店の応援団用ポロシャツなんだそうです。
それにしても、好きですね~、マスター!
ところで、このデザイン、なんだかわかりますか?
すぐにわかった人は、かなりな歴史通。
そうです、独眼流正宗こと、仙台藩主・伊達政宗の騎乗姿のシルエットです。
このマスター、いろいろ手広いというか、趣味人というか・・・
オーディオの造詣も深い。
お店の常連さんに頼まれて、こんなラジカセも店で取次ぎ販売してます。
因みに、これは商売ではないので、仕入れ価格と販売価格は同じ。
つまり、お客さんへのサービスの一環なんだとか。
この夜も常連さんの1人が、嬉しそうにラジカセを持って帰りました。
「美味しいごはんの他にも、この店でいろんなことを楽しんでもらおぅ!!」
というのが、マスターのモットーです。
さらに壁に目を移すと、いかにも港町らしいものが・・・
気仙沼港に入港する遠洋漁船の一覧です。
これを見れば、何月何日にどの船が入港するか、
一目でわかります。
漁船乗組員のお店の常連さんが、船から降りて店に立ち寄ってくれる日とか、
立ち寄ってくれなければ、こっちから「来てよ~っ!」と営業電話するのに、
とても便利なんだとか。
遠洋漁船が港に入ると、町は活気づくんだそうです。
気仙沼ホルモン・緑
さて、これからご紹介する、『気仙沼ホルモン・緑』こそ、
今回の「旅ごはん」のテーマ、
家族の絆を受け継ぐ、“親父のタレ”です。
まずは、このメニューを見てください。
さきほど食べたソース味が、気仙沼では一般的な『気仙沼ホルモン・赤』。
では、その隣にある『オレの塩・ホルモン緑』・・・
これ、いったいなんでしょう?
皿に盛られた緑色のホルモンがそれです↓
牛のホルモンに、特別に調合した緑色のタレをまぶして炭火で焼きます。
ちなみに気仙沼ホルモンは普通、豚を使うので、牛は珍しいということです。
このタレを考案したのは、美幸さんのお父さん。
タレの名は、緑塩というんだそうです。
美幸さんのお父さんは、遠洋マグロ漁船のコック。
航海に出ると、長いときは1年間帰宅しないこともあるとか。
航海中、お父さんは、豪快で鮮度抜群の料理を乗組員に毎日振舞います。
緑塩は、そのお父さんが航海中に試行錯誤して開発した、オリジナルの調味料です。
どんな食材にも合って、簡単便利。
船の上では欠かせない、万能の調味料なんだそうです。
“親父のタレ”で出直し!
美幸さんは大津波で、それまでお姉さんとやってた居酒屋を失いました。
お姉さんは大津波にのまれたけど、たまたま流れてきた建物の屋根に
這い上がって漂流。
ビルの屋上にたどり着いて、奇跡的に命拾いしたといいます。
震災から数ヶ月、美幸さんが「もう一回がんばる!」と、
夫の友志さんと2人でホルモン焼き屋を始める決心をしたとき、
お父さんが、
「これを使え」と教えてくれたのが、この緑塩でした。
緑塩の作り方ですが、ニラをベースにニンニクや数種類の
野菜をミキサーで混ぜ合わせて作るとか。
それ以上は、企業機密(?)のため教えてもらえませんでした。
取材力不足です。ごめんなさい・・・
味は、爽やかな塩味・・・といった印象。
ホルモンにかぎらず、焼肉との相性は、完璧です。
この夜も食った、飲んだ~~~~
「もっきり」、なんかいい語感ですね~
来年あたり、流行語大賞、狙えるかな~
あ~~~~っ! 今夜も満足!!
立ち飲みが苦手なことも忘れ、すっかりくつろいでしまいました。
知らない間に夜は更け、周囲の店は看板の時間に・・・
クイズの当選者発表!!
お待たせしました。
「旅ごはん・三陸編(4)」で出題したクイズの答えと、
本マグロ(生)500グラムの当選者の発表です。
クイズ:ちょっと不気味系のこの食材。
「さしみ用・モーカの星」なんて書いてあるけど、なんでしょう?
答え:もうか鮫の心臓
「モーカの星」は、気仙沼の代表的な食材です。
残念ながら、味見する機会はなかったけど、
レバー刺しみたいな味と食感がするそうです。
【http://www.kesennuma-sakanajyouhou.com/fishlist.php?GoodsID=35】
正解者の中から抽選の結果、
当メルマガ編集長、ギリギリのやすしイチ押しの
本マグロ(生)500グラムをお贈りするのは、
こちら↓の方に決まりました。
山梨県のA・Kさん(女性・34歳)
おめでとうございます!!
これからも中央卸売市場ネットショップとメルマガを、
どうぞよろしくお願いします。
旅の果てに・・・
旅の最後は三陸沿岸をはなれ、平泉の中尊寺(岩手)を訪れました。
大津波の被災地の無残な姿が別世界のような、静けさです。
もちろん、ここはわんこ蕎麦でしょう。
つわものどもが夢の跡
「夏草や兵(つわもの)どもが夢の跡」
昔の奥羽、現在の東北地方をめぐった松尾芭蕉が、
ここ中尊寺で詠んだ句です。
【http://hiraizumi.or.jp/literature/bungakusanpo/】
三陸沿岸を巡る1週間の旅。
最後に立ち寄った中尊寺の境内で、一人ぼんやりしながら、思いをめぐらしました。
「もし、芭蕉が今ここにいたら、なんと詠んだだろう?
街やそこで暮らす人々の命や夢が、たったの数分間で無に帰した現実を前に、
どんな句を残しただろう」
破壊された人間の営みは、夢の跡なんだろうか?
いや、跡ではない。
これから、また新しい夢を追わねばならない。
あるいは、追い始めたところ・・・
老いも若きも男も女も、いやおうなく、つわもの(強者)にならなければ
生きていけない。
凡人の僕など、ただただ呆然と黙り込むしかなかった三陸の現実。
この過酷な現実を表現できる言葉を、芭蕉ならもっているんだろうか・・・
2013年7月、
三陸沿岸には、この夏もまた、うっそうと夏草が生い茂っていることでしょう。
何事もなかったかのように・・・
読者の皆様へ
「旅ごはん第一弾!初夏の三陸海岸をレンタカーで疾走」は、
今回でおしまいです。
読んでくださって、ありがとうございました。