乾いたのどを潤してみませんか
2016.06.20|旬を楽しむ!
夏の暑い日差しのなか近所に住むお義母さんが、
息子達のために差し入れを持って来てくれました。
カットされた美味しそうなスイカです。
真っ赤な果肉のスイカに我先に手を伸ばして食べようとする息子たちに僕は言いました。
「お祖母ちゃんに、ありがとうは?」
「ありがとう!」
「ありがとう!」
息子たちは大きな声でありがとうと言ったのですが、視線はスイカに注がれたままです。
僕は眉毛をへの字に曲げて申し訳なさそうに、お義母さんの顔を見ました。
でも、嬉しそうにニコニコとしていて少しホッとしました。
スイカの歴史は古く、アフリカの地で紀元前5000年前から食べられていたそうです。
日本とは違い、砂漠が横たわるアフリカの大地に根を伸ばす丸いスイカ。
人間だけでなく動物にとっても非常に貴重な水分をスイカは提供していました。
英語では”water melon”と表記されるのもうなずける話です。
さて、日本においてスイカは全国各地で栽培されておりますが、
最も収穫量が多い産地は熊本県です。
熊本県はどこよりも温暖な気候に恵まれているお陰で春の4月頃からスイカの出荷が始まります。梅雨に入りジメジメとした6月になると、今度は鳥取県でスイカの出荷が始まります。
この後、日本列島を南の方から北の方へ、「スイカ前線」とでも呼びたくなるような移り変わりで、石川県、千葉県、長野県、山形県、北海道と産地が移動していきます。
夏の暑い日差しの中、僕たちの乾いたのどを潤してくれる甘いスイカですが、
他の果実には無い大きなウィークポイントがあるんです。
なんだと思いますか。
それは、大き過ぎるということなんです。
ひと昔前の家庭では、井戸から汲み上げられた冷水でスイカを冷やしていました。
海水浴やキャンプ等であれば、海や川でスイカを冷やすことも出来ます。
でも、近代化された現代の家庭では冷やすところといえば冷蔵庫しかありません。
家庭の冷蔵庫では、スイカは大きすぎるのです。
このちょっとしたことが、スイカの販売方法を変えました。
それまで当たり前だったひと玉売りから、切り売りが主体になりました。
それだけではありません。
スイカが担っていた家族の絆にも少なからず影響を及ぼしたかもしれません。
スイカというのは、大家族にとっての華でした。
おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん、弟に妹。
家族の真ん中にどーんと置かれた冷えたスイカを皆で見つめる中、
お父さんが大きな包丁を取り出してズバッズバッと切り分けていく。
そうした夏の風物詩が、昔はどこの家庭でもありました。
目の前で5歳になる末っ子のレントがスイカの種を指でほじくっています。
どうも、あの黒い種が気になってしょうがない様子。
僕はレントの目の前でスイカをかぶりつき満足そうに食べた後、
黒い種だけを口から白い皿に向けてプップップッと飛ばしました。
「どうだ、スイカはこうやって食べるんだぞ」
と威張るつもりだったのですが、半分くらいの種が皿から飛び出してしまいました。
嫁さんは顔つきが変わるし、子供たちは笑いだすし、父親の面目がありません。
まー、それも良しなんですが。
どうです。
乾いたのどに、スイカはいかがですか。
大切なあの方と一緒なら、きっと笑顔がこぼれるはずです。